なぜカントを読もうと考えたか、その理由も書いておきます。
きっかけは単純でした。たぶん一年くらい前ですが、近くの「すばる書店」の思想書コーナーで熊野純彦氏の『カント 世界の限界を経験することは可能か』(NHK出版、2002年)という小さな本を見つけました。著者(熊野氏)の名前を知っていたわけではなく、またカント自身に対する関心も、学生時代ほどにはありませんでした。その本を手にとって開く気になったのは、「装丁がきれいだな」という点に関心を抱いたからでした。
家族と一緒だったので、子供たちがマンガを選んでいる間の時間つぶしだと、熊野氏の本をパラパラめくってみました。「おっ、なんか面白そうだぞ」と感じはじめた頃に「お父さーん、マンガ買ったから、もう帰るよー」と子供たちの声。熊野氏の本は買わずじまいとなりました。
しかしその日以来、その書店に行くたびに、その本が気になって気になって仕方なくなりました。ついに買ったのが、昨年末でした。もしかしたら、一年ほど前にパラパラめくったのと同じ本が(売れないまま)待っていてくれたのかもしれません。熊野氏の本はとても面白かったです。
直接カントを読んでみようと考えた理由は、いわばこれだけです。