2011年5月6日金曜日

イラク戦争についての「キリスト教民主同盟」(オランダ)の公式見解

バルケネンデ首相が2003年3月20日の対イラク戦闘行為開始後に発表した談話

関口 康訳

今夜、米国、英国、オーストラリアは、サダム・フセイン政権に対する戦闘行為を開始しました。それはわれわれが非常に長い間できるだけ防ぎたいと願ってきたことです。この戦争については、国際的にも、我が国の中でも、異なる思いがあります。オランダに住む非常に多くの人々はサダム・フセインに対して武器をとることを擁護すべきかどうかという問いと格闘しています。戦争は激しい感情を呼び起こします。わたしはそのことを理解しています。

だれもが平和で安全な世界を求めています。人々は、政治においても社会においても、平和で安全な世界のために労し、またそのために祈っています。

平和とは傷つきやすいものです。一つの政権が長期にわたって脅迫と恐怖政治の道を選んできたことは明白です。国際社会は、国際協定に我慢と忍耐を要求し、脅迫を取り除くことを試みているのです。

我慢強いことは立派なことでありえます。しかし、限度が無いわけではありません。なぜなら、そのとき、正義と平和の根拠が危機に瀕するからです。

サダム・フセインは、正義と平和にとって大きな危険です。この点では、世界のほとんどすべての国が一致しています。

彼は二度にわたって隣国を襲撃しました。彼は隣国に対して 、また自国に住むクルド人たちに対して、化学兵器を使用しました。非常に多くの人々が、彼の恐怖政治の犠牲者になりました。そして彼は、国際社会が繰り返し彼とかわしてきた協定を真剣に受け止めませんでした。

国際連合は、12年もの間サダム・フセインに対し、何よりまず、自ら武装解除することを呼びかけてきました。国際社会は、12年間の長きにわたる我慢と根気強さとをもって、その解決のために働きかけてきました。国連の安全保障理事会は、彼に協力してもらうために17の決議を採択しました。

昨年11月には、第1441号決議をもって、最後のチャンスを彼に提供しました。その決議は直接的な協力を求めるものであり、それ以外の場合は深刻な結果がもたらされるであろうというものでした。そしてサダムは、耳を傾けることを再び拒否しました。彼は今なお、大量の生物化学兵器が備蓄されている場所を申告していないのです。

われわれは、国際連合という方法によって解決を見出すために、あらゆることをしてきました。しかし、その方法は―12年間付き合った後―今週で終わりを迎えました。

これまでに多くの人々が国際法秩序の重要性について指摘してきました。そして、その指摘は正当なものです。しかし、その法秩序にとってふさわしいことは、正義を長年にわたって堂々と踏みにじってきた人々が際限なく無罪放免されるわけではない、ということでもあるのです。

そのため、オランダは、サダム・フセインに対抗すべく開始された戦闘行為に政治的支援を与えます。自由と安全こそが最高の目的なのです(そして、それはイラク国民自身にとっての自由と安全でもあります)。

オランダに軍事協力を行う意思はありません。オランダ人男女を戦場に投入するとすれば、それは議会や社会の中に幅広い支持があった場合に限られます。

今や戦闘行為は開始されました。しかし(願わくば即座に)武器の音が鳴り止む時が来ます。そのときわれわれは、イラクに住む人々を彼らの国の再建をもって助けるために、われわれの資力をみんなで用いていかねばなりません。

今日起こった出来事は、われわれすべての者たちに強い印象を与えました。われわれの心と頭は、このことで一杯です。誰もがそれを、それぞれの仕方で注視しました。われわれが自らの見方や意見を互いに分かち合うことが大切です。それが効果的でありえます。感情的にもなりえます。しかし、他者の意見を尊重することが常に大切です。なぜなら、この尊重こそが、われわれの民主主義の根拠だからです。

われわれは島国ではなく低地(ネーデルラント)で生活しています。国際的な緊張の時代には用心が必要です。政府は人々の安全のために予防措置を講じ、打ち立て、オランダにおける予測をできるかぎり確かなものにしてきました。絶対的な確かさを確保することは、われわれのような開かれた社会においては不可能です。しかし、可能な限りの措置は取りました。

今やわれわれの思いは、何よりもまず、イラク国内と周囲にいる人々の傍らにあります。そして、もちろん、この戦争行為にかかわる人々の家族の傍らにもあります。わたしは、武力行使についてはすみやかに終わりを迎えてほしいと、全身全霊から望んでいます。罪なき人の命を大切にすること。そして、危害を限定することです。

平和と安全、それと共に、われわれにとってより良き未来がもたらされることだけを、わたしは望んでいます。

キリスト教民主同盟(CDA)ホームページ掲載