2009年3月21日土曜日

W. J. ファン・アッセルト講義「ファン・ルーラーと改革派スコラ神学」(1)

以前も「国際ファン・ルーラー学会」(2008年12月10日、アムステルダム自由大学)の「講義音声」をネット上で聴くことができるサイトをご紹介しました。それを再び聴いています。不思議なもので、何度も聴いているうちに、だんだん意味が分かってくるものがあります(というか、何度も聴かないと私にオランダ語は分かりません!)。



なかでも特に面白くて何度も聴いているのは、W. J. ファン・アッセルト先生の「ファン・ルーラーと改革派スコラ神学」(Van Ruler en de gereformeerde scholastiek)です。



ファン・アッセルト教授は、プロテスタントスコラ神学に関する研究の世界的権威者の一人であり、とくに17世紀のオランダで活躍した改革派神学者ヨハネス・コクツェーユス(Johannes Cocceius)の研究者です。ユトレヒト大学神学部でファン・ルーラーから直接教わった学生であり、御自身もユトレヒト大学神学部で教えておられる人です。現在は「オランダプロテスタント神学大学」で教えておられます。



ファン・アッセルト教授の神学的立場はファン・ルーラーと同じ「改革派神学」です。プロテスタントスコラ神学に対する評価は非常に高いものです。20世紀の弁証法神学者やそれ以降のエキュメニズム神学者が好んで持ち出してきた「16世紀宗教改革からの逸脱ないし退落としての17世紀の(死せる)正統主義」という説明図式に立たず、16世紀宗教改革からのラディカルな継続性(radicale continuiteit)が17世紀正統主義にあることを主張するものです。



この講演の中でファン・アッセルト教授は、radicale continuiteit theorie(根本的継続理論)という表現を用いておられます。この理論と同じ基本線に立つ人々として、元ハーバード大学教授ハイコ・A. オーバーマン教授(故人)や米国カルヴァン神学校のリチャード・ムラー教授といった方々を挙げておられます。



そのファン・アッセルト講義の音声はこれ(↓)です。
http://cgi.omroep.nl/cgi-bin/streams?/eo/radio/kerkinbeweging/2008-2009/vanasselt.wma



これは分科会における短い講義だったのですが、私は別の分科会に参加しましたので直接聴くことはできませんでした。しかし、帰国後ネットに講義音声が公開されて以来何度も聴いていてやっと分かってきたことが、いくつかあります。今日特にピンと来た部分は、この講義の真ん中あたりですが、次のようなことを言っておられるところです。



「ファン・ルーラーはカルヴァンをラディカルに相対化した。彼は自分の神学を『カルヴィニズム神学』(Calvinistische theologie)として把えることは決して無く、常に『改革派神学』(gereformeerde theologie)として把えていた。しかし、それはまた、一教団としてのオランダ改革派教会(Gereformeerde Kerken in Nederlands、GKN)の神学であるという意味でもないことは言うまでもない〔なぜならファン・ルーラーはGKNではなくNHKの神学者であるゆえに〕」。



この発言の直後、会場から爆笑が起こります。この講演会場が元GNK教団の教職者養成機関(神学校)であった「アムステルダム自由大学」であったゆえの笑いであると思われます。つまり、出席者たちは、ファン・アッセルト教授がアブラハム・カイパーの「カルヴィニズム」とカイパーが創設した「アムステルダム自由大学」とに対する軽い当てこすりを述べたことに大いに反応したわけです。他にもご紹介したい点がたくさんありますが、今は我慢します。



この国際ファン・ルーラー学会の講演音声は、多くの方々にお聴きいただくことをお勧めいたします。何度も聴いているうちにだんだん分かってくるはずです(一度も聴かなければ決して聴き取れるようにはなりません)。



以下URLに講演音声のリストがあります。http://cgi.omroep.nl...から始まるリンクをクリックすると、音声がスタートします(メディアプレーヤ等の音声再生ソフトが必要です)。レッツ・トライです!



国際ファン・ルーラー学会の講演音声リスト
http://www.aavanruler.nl/index.php?alias=Impressie