2016年6月4日土曜日

変貌の山での祈り(松戸朝祷会)

カトリック松戸教会(千葉県松戸市松戸1126)
マルコによる福音書9・1~8

「また、イエスは言われた。『はっきり言っておく。ここに一緒にいる人々の中には、神の国が力にあふれて現れるのを見るまでは、決して死なない者がいる。』六日の後、イエスは、ただペトロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。イエスの姿が彼らの目の前で変わり、服は真っ白に輝き、この世のどんなさらし職人の腕も及ばぬほど白くなった。エリヤがモーセと共に現れて、イエスと語り合っていた。ペトロが口をはさんでイエスに言った。『先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。仮小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、もう一つはエリヤのためです。』ペトロは、どう言えばよいのか、分からなかった。弟子たちは非常に恐れていたのである。すると、雲が現れて彼らを覆い、雲の中から声がした。『これはわたしの愛する子。これに聞け。』弟子たちは急いで辺りを見回したが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが彼らと一緒におられた。」

勤務している高校の廊下で一人の先生から「関口先生すごいですね」と声をかけられました。「はい、すごいんです」とお応えしましたが、何がすごいのか分からなかったのでお尋ねしたら、「関口先生の名前がカトリック新聞に載っていました」とのこと。私は読んでいませんでしたので、びっくりしました。

松戸朝祷会の広告の中に私の名前があったそうです。私もついにカトリック新聞にデビューすることができました。ありがとうございます。「典礼色オムニバスシリーズ」は、とても興味深い企画だと思います。私に与えられた宿題は「白」です。聖書の箇所も「白」にちなんだ内容のところが選ばれています。

「白」でなぜ今日の箇所が選ばれたのかはすぐに分かりました。イエスさまが特別に選んだ三人の弟子、ペトロ、ヤコブ、ヨハネを連れて高い山に登られ、山の上で「白く」なられました。「イエスの姿が彼らの目の前で変わり、服は真っ白に輝き、この世のどんなさらし職人の腕も及ばぬほど白くなった」。

これを読むかぎり、白くなったのはイエスさまの「服」です。いま私も毎日、服が白くなる生活をしています。黒板にチョークで字を書くと、チョークの粉で、服が真っ白になります。ごめんなさい、ごめんなさい。全く関係ありません。ここで描かれているのは、そのようなこととは違う次元のことです。

「白く」なったのはイエスさまの「服」だけではないと私は考えます。三人の弟子にははっきり見えたに違いない、ふだんのイエスさまとは明らかに異なる、とても神秘的で美しい「白い」イエスさまのお姿が山の上に立っておられたであろうことを、わたしたち自身も想像することが許されていると思います。

その「白い」イエスさまの前にモーセとエリヤが現れました。二人とも旧約聖書に登場する偉人であり、神の民の指導者です。その二人とイエスさまが山の上で協議会をおはじめになりました。そして、特別に選ばれた三人の弟子は、その協議会への陪席を許可されました。すごいメンバーの、すごい会議です。

そのあまりの緊張感の中、黙っていればいいのに、そそっかしいペトロが、自分でも何を言っているのか分からないような、余計なことを口走る。「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。仮小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、一つはエリヤのためです」。

せっかく天国から戻ってきてくれたモーセとエリヤがまた天国に帰ってしまうのが寂しくて引き止めたかったのかもしれません。「仮小屋を建てる」と言い出す。だけどイエスさまの分も作りましょうと言わないとイエスさまに失礼だと思ったのかもしれません。ただ思いつきを口走っているだけだと思います。

そうしましたところ、「雲が現れて彼らを覆い、雲の中から声がした」と記されています。ここから先は「白」ではなく、「黒」ないし「グレー」の話です。弟子たちは急いで辺りを見回しましたが、もはやだれも見えず、ただイエスさまだけが一緒におられました。モーセもエリヤも天国に帰って行きました。

雲の中から聞こえた声の主はイエス・キリストの父なる神です。「これはわたしの愛する子。これに聞け」と神御自身が弟子たちにお命じになりました。これで分かるのは、この話はイエスさまの神秘的な変貌の情景を描いたものでもありますが、同時に神学的な意味を持っている箇所でもあるということです。

旧約聖書において啓示されていた神の御心は、新約時代においてはイエス・キリストにおいて啓示されます。そのことが主張されています。

典礼色の話からは遠くなりましたことをお許しください。

わたしたちは「白い」イエスさまにこれからも従って生きていきたいと願います。

(2016年6月4日、松戸朝祷会、於カトリック松戸教会)