2014年12月31日水曜日

「関口康が選ぶ 二年で最高の本 BEST BOOK OF TWO YEARS 2013-2014」選考結果発表

「関口康が選ぶ 二年で最高の本 BEST BOOK OF TWO YEARS 2013-2014」

選考結果発表

ポール・リクール著『ポール・リクール聖書論集2 愛と正義』
(久米博、小野文、小林玲子訳、新教出版社、2014年)


厳正かつ「純粋に主観的に」選ばせていただきました。

【理由】

訳文が抜群に読みやすかったです。そして、収録論文のすべてが私の関心にドンピシャでした。

説教や翻訳などの書き言葉や語り言葉をどうするかというようなことで日々悩んでいる者として、「神の言葉」と「聖書」をいずれも大文字のパロール(言葉)とエクリチュール(書)としてとらえることの意味を教えられ、たいへん面白かったです。

本書の中で私が最も感動した文章を引用させていただきます。

「従って、預言者の口から語られる主の〈言葉〉は、全ての語られる言葉が持つ脆さを抱えており、書のみが、それを破滅から救ってくれる。『このように主は語る』という不在の声がわれわれのところにまで届くには、この二重の口述筆記がどうしても必要なのである。そして書かれた痕跡の消える危険が迫ることもあるからこそ、よく知られているようにエゼキエルは巻物を食べるようにとの強い促しの声を聞いたのだった。それはまるで、語り、また食べるその同じ口が、書かれたものとして生きた声の支えを既に奪われた書に対して、肉体を与えることができるかのようである」(81ページ、小野文訳)。

素晴らしい本を書いてくださったリクール先生は2005年に死去されましたので感謝の言葉を届けることはできませんが、訳者の久米博先生とは親しくさせていただいていますので、改めて感謝の言葉をお伝えしたいと思います。共訳者の小野文氏、小林玲子氏、そして新教出版社に感謝いたします。