2011年3月27日日曜日

政府の放射線障害防護の対応について

名古屋教会の原科浩長老(物理学者)が貴重な情報を提供してくださいました。ご本人の許可を得られましたので、謹んで転載させていただきます。

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「政府の放射線障害防護の対応について」

 原科 浩 (日本キリスト改革派名古屋教会長老、大同大学教員、物理学者)


福島原発の事故と放射性物質による汚染の拡大に憂慮しています。安全、安全を繰り返す政府やマスコミに登場する学者たちが、旧約聖書の偽預言者と重なって見えるのは私だけでしょうか。

内容が難しいかもしれませんが、参考になるサイトとして

原子力情報資料室 http://cnic.jp/
原子力安全研究グループ http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/index.html

をあげておきます。

また、京都大の今中哲二さんが

「福島県飯舘村のセシウム137による土壌汚染レベルの推定
 チェルノブイリ原発事故の当初の強制移住レベルの2倍以上
 1990年にベラルーシ最高会議が決定した強制移住レベルの約6倍 」

と推定しています。(全文は、美浜の会 http://www.jca.apc.org/mihama/

政府は安全が確認されるまで、住民を避難させるべきではないでしょうか。

私は、原子力発電や放射線医学の専門家ではありませんが、放射線を研究に利用している物理学研究者です。放射線を利用するには必ず教育訓練を受けなければなりませんが、そのとき学ぶ放射線防護の考え方から、政府の対応やそれを支持する専門家の姿勢はおかしいと考えています。

放射線障害防止法やICRP(国際放射線防護委員会)では、放射線の影響を、急性障害(確定的影響)と晩発性の発ガン率の増加(確率的影響)に分けて考えます。

急性障害はある一定量以上の被ばくがなければ生じないとしていますが、発ガン率の増加などは、どんなに少ない量の放射線被ばくでもゼロにはならないと仮定して防護を考えます。放射線の被ばくは可能な限り低く抑えるのが原則です(ALARA原則 As low As Reasonably Achievable)。公衆の年間被ばく限度を1ミリシーベルトと定めていますが、1ミリシーベルトまで被ばくしてもよいという値ではないはずです。

テレビで100ミリシーベルトぐらいなら(直ちに)健康に影響はないと言っている学者さんはおかしいです。少なくとも年間1ミリシーベルト以上は被ばくさせないように、政府は住民避難などを考えるべきだとなぜ言わないのでしょうか。

「直ちに健康に影響はない」は、急性障害は生じないという意味で使っていると思います。暗に、数年後の発ガン率の増加がないとは言っていませんよという表現です。事故が長期化し、汚染が広がってきた状況では、この点についてマスコミも触れずにはすまなくなってきたようです。

自然放射線による発ガンリスクは、10万人に2人程度と推定されています。自然放射線レベルなら安全ということではないことを知ってください。ましてや、レントゲン撮影やCTによる被ばくと比較して問題ないという言い方もとんでもありません。病気やけがでもないのに、レントゲン撮影を受ける人はいません。

飲食などによる内部被ばくについても、同様な意味で深刻に考えるべきと思っています。確かにすぐ病気になることはないでしょうが。摂取を厳しく制限し、安全な飲食物を政府の責任で確保・配給してほしいです。

関東・東北に暮らしておられる方々、兄弟姉妹、特に子供たちの健康と安全を危惧しています。政府の対応は、住民の安全を第一に考えて行っているとは、私には思えないのです。