2025年8月20日水曜日

外国語の神学書をどんどん読んでくれるエーアイ

キリスト教神学資料室(牧師館内) 2024年10月24日撮影

【外国の神学書をどんどん読んでくれるエーアイ】

人工知能の使い道の話に私の出る幕は無いと思っているが、個人的に期待しているというかすでにフル稼働中の分野は、大量に譲り受けた外国語の神学書の乱読。古くて忘れ去られたものばかりで、翻訳出版の話などありえず、プロ翻訳家の出版物を待っても無駄。「正確な訳」かどうかより「読むこと」が重要。

来春、研究発表してくれと言われている日本の昔の神学者の背景を調査する中、その人が留学先で指導を受けた可能性があるアメリカの組織神学者が書いた教科書が私の書斎にある。そういうのをざっくり読むために人工知能の翻訳能力は大いに頼れる。積(つ)ん読(どく)が読(よ)ん読(どく)になる。

語学が得意な人たちがときどきSNS等で、自慢の語学で暗号のように何かつぶやくのを見かける。ボタンひとつで何を言っているかほぼ分かる。あいさつ程度の場合が多い。ドイツ語のひげ文字も、ヘブライ語も、ペルシア語なども同じ。くさび形文字はどうかは知らないが、たぶんボタンひとつで訳してくれそう。

人工知能のせいで「語学を学ばない人が増えるかもしれない」ことを危惧する向きがあるかもしれないが、別の考え方もできるだろう。死蔵する他なかった諸外国の文献の思想世界に突入できるようになった。出版に値するかどうかを「正しい訳」というなら別の話になっている。読むか読まないかだけが問題。

神学書の翻訳出版は今後も期待したいが、私個人は新刊書籍を定価どおり買えたためしがない。図書館という空間に馴染めない人間なので、自分で本を所有したいが、わが書斎の本はどれもこれも初めから20年30年経て安くなってから買ったものばかり。最近は某オクに出品された遺品と思われるもの。

自分で買ったものではなく無償で譲り受けた大量の本の中に外国語のものが多い。ルターの英語版全集。大量のカルヴァン研究書(英語、ドイツ語、オランダ語)。数十年分の米国カルヴァン神学校の紀要。これまた大量の現代の組織神学。カール・バルト、ボンヘッファー、ユンゲル、パネンベルク、ハンス・キュンク。

日本語版を新刊の定価で買うお金が無いので、人工知能に読んでもらっている。それを私が出版するわけではないので「正しい訳」かどうかは、さほど問題ではない。そこで何が話題になっているか、どういう解決策が提案されているか、その提案が日本のキリスト教宣教にとって有益かどうかが分かればよい。

「出版」の概念も昔とは大きく変わっただろう。ブログやSNSの記事は訂正や削除や改変が容易すぎるので、学術論文などの土台にするのはいまだに難しそうだと私も思う。しかしネット記事の可変性や流動性は長所でもある。「正しい訳」よりも「いま必要な言葉」を得ることのほうが重要な場面がある。