2016年3月9日水曜日

日本基督教団教師転入試験「教憲教規および諸規則・宗教法人法」追試レポート

(以下は日本基督教団教師転入試験「教憲教規および諸規則・宗教法人法」追試レポートとして私が回答した内容です。提出期限が2016年3月9日でした)

設問1の回答

「教憲教規および諸規則」に定められている会議制について「論じて」くださいという設問で、どれほど深遠な回答をすれば設問者各位の意に沿うのかは図りかねるところがありますが、千字程度とのご指定がありましたので、その範囲内で回答させていただきます。「なぜ教団が会議制をとっているのか」の理由を「明確に」書けばよろしいのでしょうか。

教会は「イエス・キリストの体」です。また三位一体論的にいえば、父なる神が、御子イエス・キリストにおいて、聖霊を通して、人間に信仰という恵みを与えてくださり、その恵みによって選ばれた人々の群れとしての「教会」は、地上において神の御心を実現していくための器として用いられる存在です。

そうであるかぎり、教会は一個人で存在することはありえず、必ず信仰者の群れとして存在します。その場合の教会とは、各個教会でもあり、かつ一全体としての「教団」の意味を含みます。その群れの意志決定は、神の御言葉としての聖書(ノルマ・ノルマンス)の啓示に基づき、かつ聖霊の導きによる教会会議の決議を経て定められた諸信仰告白(ノルマ・ノルマータ)に基づきつつ、多数決ないしそれぞれの群れが定めた意思決定のルールに則って行われます。

その教会会議の意志決定を、教会は「神の御心」と信じます。そのため、厳粛な姿勢で、祈りをもってその意志決定の場に臨み、父なる神が御子イエス・キリストにおいて、聖霊を通して、信じる人の心に表してくださる御心が何であるかを探りつつ、熟慮のうえ決議に参加しなくてはなりません。

各個教会の中で、役員会等の会議を経ないで個人で決めたことを「神の御心」と考えることは、我々キリスト者には不可能です。なぜなら、聖霊なる神は特定の個人だけにお働きになる方ではなく、イエス・キリストにおいて父なる神を信じるすべての人に働いてくださるからです。

教会において、ある特定の人の意見だけを重んじ、他の人の意見を重んじないことは、聖霊の導きに反します。ある人の意見と他の人の意見とが異なり、ぶつかり合っているときは、神の御言葉である聖書を開き、学びつつ、信仰による一致を祈り求めていかなくてはなりません。

また、教区や教団の中で、単独の教会だけが主張していることが、他の多くの教会が主張していることとどれほど食い違っていようと、その単独の教会の規模が大きいとか歴史や伝統が古いからとかいう理由だけで、それをもって「神の御心」と考えることも、我々キリスト者には不可能です。

教団や教区の中には、大きな群れもあれば小さな群れもあります。それぞれの群れはそれぞれ異なる状況の中で福音宣教の使命に懸命に携わっているのですから、小さな群れだからといってその意見が軽視されるようなことがあってはなりません。だからこそ、教団や教区にそれぞれの最高議決機関としての「総会」を設けて、互いに祈り合いつつ、教団や教区の「総会」において示される神の御心を問うことが重要です。

設問2の回答

設問2に関しても設問の意図を図りかねるところがありますが、要するに「明確に」書くことが求められているのでしょうか。千字程度で、とのご指示の範囲内で書かせていただきます。

どのあたりを議論の出発点にすべきかにもよりますが、そもそも規則を変更することは、教会を含むあらゆる団体にとって重大な事態であることを意味するのは確実ですので、そうしなければならない明確な理由や原因がないかぎり、規則の変更自体を行うべきではありません。

しかしまた、規則そのものは聖書(ノルマ・ノルマンス)でも信仰告白(ノルマ・ノルマータ)でもないため、軽々な変更は慎まなくてはならないとしても、変更不可能であるとはいえません。状況に応じて変更することが可能であり、また必要でもあります。

とはいえ、前記のとおり、規則変更は教会を含むすべての団体にとっての重大な事態を意味しますので、各個教会の規則変更の場合は、最高議決機関である教会総会を開いて、祈りと熟慮をもって協議を重ねたうえで、その規則変更によって教会員の中に躓く人が起こらないよう、細心の注意を払いつつ、信仰による一致をもった変更を行わなくてはなりません。

そのためには、たとえ教会総会が各個教会の最高議決機関であるとはいえ、教会全体に対する事前の告知や全体協議なしに、牧師や一部の役員だけで相談して、いきなり教会総会の場に提案を行い、多数派工作や強行採決などで強引に規則変更を行うようなことは断じて許されません。

宗教法人規則は「少なくとも二ヶ月前」の教会会議の公告を定めていますが、その公示の日に、あるいは教会会議の場で変更案を初めて見たという教会員がいるようでは遅きに失した感があるのを否定できません。もっと前から、せめて一年以上前から教会全体に対して規則変更の内容と理由と意義について丁寧に説明し、周知徹底するよう牧師と役員は配慮しなくてはなりません。

とりわけ各個教会の宗教法人規則の重要な目的は、教会の境内地や建物等の不動産等、教会が所有する物理的財産の管理運営に関することを、国の法律との関係の中で扱うことにあります。それは教会の霊的財産である聖書や信仰告白や説教や牧会などの面と比較しても決して軽んじることはできない重要な事柄であることは確実です。

教会の物理的財産の管理という面において教会がルーズであれば、教会員や関係者、さらには周辺地域の人々まで教会に対して失望し、躓くことになり、その地域での伝道の継続がきわめて困難になるでしょう。きわめて悪質ではありますが、教会の財産の名義を牧師の個人名義に勝手に変更し、牧師個人の借金の抵当にしていたというような事例まであります。そのようなことが断じて起こらないように、宗教法人規則についても厳重に取り扱うことが重要です。

従って、各個教会の宗教法人規則の変更手続きは、以下のような手続きを要します。

(1)規則変更を提案する者は、教会全体に対してできるだけ早期に規則変更の趣旨説明を行い、複数回の勉強会等を開催して、その趣旨の周知徹底を図る。

(2)少なくとも二ヶ月前に、教会総会の公示を行う。その時点においては変更案の詳細が明示されていることが望ましい。具体的には、現行規則と変更案を併記し、容易に比較検討することができる形の提案がなされるべきである。

(3)教会総会において多数の議決を得た変更後の規則は、宗教法人規則の場合は所轄庁による認証が必要ですので、その手続きをすみやかに行います。