2010年8月27日金曜日

オランダ語版『ファン・ルーラー著作集』についての新しい情報

残暑お見舞い申し上げます。皆様、酷暑の中、いかがお過ごしでしょうか。

さて、かき氷の代わりにはなりませんが、「たまには神学の話題もいかがですか」という感じで、少しだけお付き合いいただけるとうれしいです。

オランダ語版『ファン・ルーラー著作集』がこれまで第1巻から第3巻まで刊行されましたが、第4巻がなかなか出ないので、どうしたことかと思っていました。

第1巻のタイトルが『神学の本質』、第2巻は『啓示と聖書』、第3巻は『神、創造、人間、罪』と続き、第4巻はいよいよ神学の本丸としての『キリスト、聖霊、救済』に突入することになっていましたので、今か今かと心待ちにしていました。

ところが、このたび発表されたことは、な、なんと、第4巻は「二分冊」(IVA/IVB)になり、今年2010年12月に刊行予定であるとのこと。そのことが出版社の公式ホームページで明らかにされました。

そのことは、ここ(↓)に書いています。
http://www.boekencentrum.nl/shop_details.php?productId=23198

もっとも、そのあとに続く第5巻も第6巻も、それぞれ「二分冊」にするという計画を、出版社はかなり前から発表していました。ちなみに、第5巻のタイトルは『神の国、宣教、教会』、第6巻は『政治、国家とセオクラシー、教会職制とエキュメニズム』です。

さらに計画では、著作集全体は全9巻で構成されることになっており、第7巻は『対話集(カトリックとプロテスタント、など)』、第8巻は『説教と黙想』、第9巻は『索引と文庫目録』になるとのこと。とくに注目すべきことは、計画の出発の段階では「本著作集には説教や黙想は含めない」と発表されていた説教や黙想が収録されることになったことです。読者としてはうれしい話ですが、編集者たちとしては出版計画の二転三転で大変な状態だろうと想像できます。

オランダ語版『ファン・ルーラー著作集』(Dr. A. A. van Ruler Verzameld Werk)の新しい構成

 第一巻 神学の本質*
 第二巻 啓示と聖書*
 第三巻 神、創造、人間、罪*
 第四巻 キリスト、聖霊、救済(上・下)
 第五巻 神の国、宣教、教会(上・下)
 第六巻 政治、国家とセオクラシー、教会職制とエキュメニズム(上・下)
 第七巻 対話集(カトリックとプロテスタント、など)
 第八巻 説教と黙想
 第九巻 索引と文庫目録         (
*既刊)

以上の動きに関して総じて言えることは、出版計画の最初の段階よりも巻数がだんだん増えてきているということです。

そのことを(いくらか期待値を含めて)別の言葉で言い直せば、この著作集の出版事業そのものが順調に進展しており、売れ行きなども(おそらく)好調であり、出版資金的にも潤沢になってきたために、計画当初は「今どきこんなものが売れるのかい?」と半信半疑であった著作集刊行会の人々の心も改められ、収録論文の数を増やすことができそうなので、これも入れよう、あれも入れようと、先行きの見通しが開けてきたからに違いないということです。

だからこそ巻数そのものが増え、全9巻の予定ながら、そのうち3巻もが「二分冊化」され、すべての冊数は12冊にも膨れ上がってきたわけです。しかも、各冊のページ数の平均は約500ページ強ですから、ごく大雑把に数えても500×12=6000ページ強の「巨大な著作集」(!)が数年後には完成することになるということです。

もっともオランダには、20世紀のプロテスタント神学者の「巨大な著作集」としてウプケ・ノールトマンス著作集(Oepke Noordmans Verzamelde Werken)とミスコッテ著作集(Verzameld Werk van K. H. Miskotte)という二大著作集がありましたので、ファン・ルーラーのそれは「遅刻してきた」ものです。しかし、質的・内容的に言っても、量的・規模的に見ても、話題性・国際性から言っても、ファン・ルーラーの著作集が三つの巨大著作集の中では最大級のものになるであろうことは、今からはっきりと断言できます。

さて、このようにオランダの状況が相当流動的な様相であることが分かりましたので、わたしたち日本のファン・ルーラー研究会としてもかなりしっかりと腰をすえて、じっくり取り組む他は無いだろうと私自身は考えている次第です。

しかしまた、オランダ語版著作集がすべて刊行され終わったときが、わたしたちが翻訳のために動き出すときであると考えるとしたら、それはいくらなんでも遅すぎるわけですから、現時点で我々が手にしている文献に基づいての翻訳を可能なかぎり進めておく必要があると思っています。

この記事の趣旨は、短く言えば「ファン・ルーラー著作集がオランダで売れているようですよ!わたしたちもがんばりましょうね!」ということです。

私も少しずつですが、とにかくコツコツ続けています。先日『季刊 教会』誌に前半部分を掲載していただいたファン・ケウレン博士の論文(ファン・ルーラーとカール・バルトの神学との関係について)の後半部分の翻訳が完了し、その原稿を10日ほど前に編集部に送りました。後半部分もお読みいただけますとうれしいです。