日本キリスト教団昭島教会(東京都昭島市中神町1232-13) |
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関口 康
「ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」
クリスマスおめでとうございます。クリスマスイブ音楽礼拝にお集まりいただき、ありがとうございます。
昨年は行うことができませんでした。今年はこんなに大勢の方々がご出席くださり、本当にうれしく思います。
私は今年、昭島教会の牧師をしながら、3つの学校で聖書を教えています。どうもその悪影響が出ているようです。教会の方から「最近の関口先生の説教は聖書の知識についての話ばかりで、まるで学校の先生のようです」というご指摘がありました。学校に染まりすぎかもしれません。
しかし、今日もお許しください。今日の箇所に登場する「皇帝アウグストゥス」とは何者なのかの説明から話を始めます。歴史的な説明を避けることができません。
ジュリアス・シーザーの名前は、ご存じでしょうか。シェークスピアの劇で、暗殺されるとき「ブルータス、お前もか」と叫ぶ人。あのシーザー(ユリウス・カエサル)の後継者がアウグストゥスです。
シーザーまでのローマは共和制でした。まだ比較的みんなで相談して決める政治の形が残っていました。しかしシーザーが独裁者になって暴走しはじめたので、それを食い止めるためにブルータスたちによって暗殺されました。それは悲劇でした。
しかし、そのシーザーの後継者がアウグストゥスです。アウグストゥスはシーザー以上の独裁者になりました。地中海沿岸のほとんどの地域を強大な軍事力で制圧し、支配しました。
ところが、その独裁者とは真逆の姿で真の救い主がお生まれになったというのが、今夜の箇所の主旨です。「皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録せよとの勅令が出た」(1節)のは、ローマ帝国に税金を納める人の人数を調べるためです。
それでやむをえず、イエスさまがお腹にいる母マリアと夫ヨセフが、その住民登録のために遠くまで旅をしなければなりませんでした。強いられた感、やらされている感の中で、ひきずりまわされ、ひどく辛い目に遭わされました。
しかし、同じ目的で移動中の宿泊者が多く、宿屋に空き部屋が無かったので、なんと惨めなことに、家畜小屋で出産となり、なんと見すぼらしい飼い葉桶の中に生まれたばかりのイエスさまを寝かさざるをえなかった、という話です。
しかし、今日お話ししたいのはもう少し先のことです。実は今夜開いているルカによる福音書と、もうひとつ新約聖書の使徒言行録という書物は、同じ著者が書いたものです。そして、使徒言行録の最後に書かれているのは、使徒パウロがローマ帝国の首都ローマにたどり着き…イエス・キリストについて教え続けた(使徒言行録28章31節)事実です。
つまり、ルカによる福音書と使徒言行録の2冊の書物を書いた人は、イエスさまがお生まれになった時代のローマのひどい独裁者のせいでイエスさまも含めた多くの人々がひどい目にあった事実から書きはじめて、使徒パウロがローマでイエス・キリストの福音を宣べ伝えはじめるまでのすべてを関連付けて考えたうえで、今日の箇所の出来事についても書いていると言えます。
これで私が何を言いたいか。今夜はクリスマスイブです。クリスマスにおいてわたしたちが、イエスさまがお生まれになったことをお祝いするのも大事です。しかし、「イエスさまがお生まれになった」で話が終わらないことが大事です。
真の救い主としてイエスさまがお生まれになったことを信じて受け入れ、イエスさまの教えと生きざまに倣って生きて来た「教会」が世界中に生まれたことこそが、イエスさまの存在に匹敵するほど大事である、ということです。
クリスマスが12月25日であるのは、イエスさまが「12月25日生まれ」であるということではありません。詳しい説明はやめますが、今から1600年ほど前に、イエスさまのお誕生をお祝いする日を「12月25日」にしましょうと決めただけです。そしてそれ以来、毎年教会でクリスマスが祝われるようになりました。それをしたのは「教会」です。
今日お話ししたいのは「教会なしにクリスマスはない」(No Church No Christmas)ということです。今では世界中でクリスマスが祝われています。しかし「教会のことが忘れられていませんか」と思うことが多いです。
「教会、教会」としつこく言いますと、クリスマスイブ音楽礼拝の楽しい時間を台無しにしてしまいますので、これでやめます。
しかし、「教会」を忘れないでいただきたいです。もし可能でしたら、日曜日に教会に通ってください。昭島教会が遠い方は近所の教会に通ってください。ぜひよろしくお願いいたします。
(2021年12月24日、クリスマスイブ音楽礼拝)